Beranda / 恋愛 / 憎しみと愛~共犯者と綺麗になった私の七年越しの復讐計画~ / 第31話 相談役の圧力と、背水の陣で始まる戦い

Share

第31話 相談役の圧力と、背水の陣で始まる戦い

last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-20 17:53:19

 静寂が、ほんの一拍で張りつめる。

 いずみはまばたきもせず、手元の茶器を指でなぞった。

「あなたが……判断したの?」

「はい。

 鬼塚氏と経営企画部長とは意見交換をしましたが——

 最終的に決断したのは、私です」

 晴紀はわずかに息を整え、続けた。

「季節導線の秋・冬のシーズン企画を含めた、ブランド刷新プロジェクトを……朱音さんに一任します」

 会議室の空気が、ひとつ震えた。

 いずみの目がかすかに細められる。

「……あの人をね。

 大丈夫かしら?」

「必要だと判断しました」

「……誤解されるわよ、いろんな人に」

 いずみは淡々と言いながら、ゆっくり椅子の背へ体を預けた。

「それは私が対応します」

 晴紀は逃げずに告げる。

「承認権限は……役員会ではなく、社長直下でお願いします」

 空気がさらに冷えた。

 いずみの指が、ほんのわずかに止まる。

 視線だけを凍らせながら、静かに言葉を落とした。

「つまり——私の意見は聞きたくないということ?」

「違います。いずみさんの意見は必要です。

 ただ——今回の案件はスピードと責任所在が最優先です。

 そのために、私が全責任を負う形にしました」

 火花が散るような静けさ。

 相談役室全体が、いずみの呼吸で動いているようだった。

「晴紀さん。

 あなた、変わったのね。昔のあなたなら——」

「昔なら、逃げていました」

 いずみはそこで初めて、ほんのわずかに眉を動かした。

「……潔いわね」

「変わらなきゃ、会社が持たないからです。

 ——清晴堂の未来のためです」

 短い沈黙。

 銀座の冬の光が、二人の間の空気を細く照らす。

「分かったわ」

 いずみは穏やかな声で言った。

「あなたの好きにしなさい。

 ただし——」

 茶器を置く。

 小さな硬い音。

「失敗したら、全部あなたの責任よ。

 支援も、人脈も、評判も……私の名前も守れない」

 その一語で、晴紀の呼吸が一瞬止まった。

 清晴堂の資金の流れ、揺らぐ取引先、その先にある崩落——全部が脳裏をかすめる。

 いずみはその沈黙を確かめるように、静かに微笑んだ。

「……覚悟しています」

 晴紀が立ち上がり、深く一礼し、部屋を出る。

 扉が閉まった後、数秒の沈黙。

 いずみが指先で茶器に触れた瞬間——

 パキン。

 陶器の取っ手が折れ、

 白い破片が静かに床へ落ちた。

 いずみは微笑みを崩さ
Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terbaru

  • 憎しみと愛~共犯者と綺麗になった私の七年越しの復讐計画~   第53話 空の上で語られた真実が、私を変えはじめた

     パリ行きの搭乗口へ向かう動く歩道。 ガラス越しの空は、絵の具を溶かして流したように澄んでいた。「……晴れてよかったな」 晴紀が、ほんの少し肩の力を抜いた笑みを見せる。 雨の屋上で「もう無理かもしれない」と呟いていた背中が、ふっと脳裏をよぎった。「本当ね。……そういえば、一行、貸してくれるところが出たって悠斗さんが」「ああ。あれで、かろうじて一ヶ月の余裕ができた。 でも──本当の勝負はここからだ」 晴紀の視線は、搭乗口の先の青空に吸い込まれるように向かっていた。「秋企画と、今回のパリでの勝負。 この二つが成功すれば……本当に、清晴堂は息を吹き返せる」 言葉の端に宿る弱さも震えも、そのまま本音だった。「どん底だったのに……朱音のおかげで、ここまで来られた」「そんな……私はただ、できることをしただけよ」「いや、違う。朱音が晴れを呼んでくれた。 ──これ、覚えてるか?」 晴紀が背広の内ポケットから、小さな淡い水色の手帳を取り出した。 七年前に私が書いた一行。『どうか──自分の晴れを、誰かのために使える人でありますように』 胸の奥がきゅっと熱くなる。 忘れていなかったんだ、と気づくだけで呼吸が浅くなる。「俺は……自分の晴れを、ちゃんと使えてるのかな」「晴紀は変わった。 前よりずっと決断できるようになったし……みんなのために動いてる」「そうか。そう聞けると……救われるな」 その横顔が一瞬、昔より少しだけ大人びて見えた。「それに、後を継いだのも後藤親方や職人さんのためでしょう? 本当は、ずっとそういう人だったんだと思う」 晴紀が小さく笑い、視線を落としかけ── 【まもなく、パリ行き便ご搭乗の案内を開始いたします】 アナウンスが割り込み、二人は同時に顔を上げた。「……行こうか」「ええ」*** 機体が安定飛行に入ると、周囲のざわめきが遠のき、ビジネス席の区画はやけに静かになった。 窓の外は雲の海。 光だけが白く反射していて、現実から少し切り離されたような空間。 しばらく二人とも黙っていた。 沈黙だけが、胸の奥のざわつきを際立たせる。 ふいに、晴紀が小さく息を吐いた。「こうして、また朱音と隣で飛行機に乗ってるのが……なんか不思議だな」 柔らかい声だった。 そのあとで、少し間を置いて、「あの頃は……

  • 憎しみと愛~共犯者と綺麗になった私の七年越しの復讐計画~   第52話 彼を完全に手に入れたと思っていた

     晴紀がボランティアに出発した日も、帰ってきた日も、いずみは何も言わなかった。 止めなかった。 ついて行こうともしなかった。 引き止める理由が、見つからなかったからだ。 代わりに立っていた言葉は、「どうせ、すぐ戻るやろ」という、根拠のない安心だった。 ただ—— 帰ってきた晴紀は、どこか違っていた。 疲れているはずなのに、目だけが妙に冴えている。 体は重そうなのに、声には前よりも張りがあった。 話す内容が、いずみの知らない名前ばかりになる。「朱音がな」「朱音、ほんまよう怒るわ」「でも、ああいうの、嫌いやない」 まるで、日常の続きを語るみたいに。 特別じゃない出来事として、その名前を挟み込む。 名前が出るたび、胸の奥が、少しずつ重くなる。(……なんで、そんな話し方するんやろ) 高校の頃も、大学に入ってからも。 晴紀は、いずみの前で、誰かの名前をこんなふうに繰り返したことはなかった。*** それでも、隣に来なくなったわけじゃない。 帰り道も、食堂も、座る位置も、変わらず一緒だった。 話しかければ返ってくる。避けられてもいない。 だから、まだだと思った。 流れは、続いている。私は、外されていない。 そう思わないと、足元が崩れそうだった。*** でも—— ある日、ぽつりと聞いた。「今度の休みも、行くん?」「うん。朱音も来る言うてた」 その名前を、あまりにも自然に言うから。 心臓が、一拍遅れた。(……あ) 気づいてしまった。 晴紀は、もう「戻る場所」として、ここに来ていない。 疲れたから戻るんじゃない。安心するためでもない。 何かを得に行っている。 いずみのいない場所で。 それでも、いずみは、それを恋だと思った。 だって、彼がいるときだけ、息ができたから。 胸が詰まらず、肩に力が入らず、自分が自分でいられた。 それが、いつからか——自分だけの特権じゃなくなっていたとしても。*** 大学四年の冬だった。 晴紀のお父さんが倒れて、ほどなく亡くなった。 葬儀は、静かだった。老舗らしく、淡々としていて、感情を外に出す人はいなかった。 晴紀も、泣かなかった。気丈に振る舞っていた。 でも、その背中だけが、急に大きくなったように見えた。 帰り際、ぽつりと笑って言った。「……店、ちょっと危ない

  • 憎しみと愛~共犯者と綺麗になった私の七年越しの復讐計画~   第51話 恋だと思っていたのは、私だけだったのかもしれない

     それからは、探すようになった。 朝、少し早く家を出る。 校門の前を見渡して、晴紀の姿を探す。 いなければ歩調を落とし、見つけたら同じ方向へ歩く。「……おはよう」「おう」 それだけ。 話さなくても、追い払われなければ十分だった。 放課後。 いずみは教室に残ったまま、鞄を閉じずに席に座っていた。 ――帰りの迎えは、断った。 ほんの一言で済むことなのに、電話を切るまで、指が少し震えた。 晴紀が立ち上がる。 いずみも、少し遅れて立つ。 何も言わずに、隣に並ぶ。 そのとき、晴紀は一度だけ、何か言いたそうな顔をした。 眉がわずかに動いて、口を開きかけて――やめる。「……帰るん?」 探るような声。「うん」 それだけ答える。 理由は聞かれない。 説明もしない。 並んだまま、廊下を歩いた。*** それが、毎日続いた。 教室で待って、立つタイミングを合わせて、当然のように隣に来る。 最初の頃は、晴紀は少しだけ距離を取って歩いた。 でも、何も言わない。 止めもしない。 しばらくして、 晴紀はもう、何も言わなくなった。 隣に来ても、振り向かない。 いるのが前提みたいに、そのまま歩く。 さらにしばらくしてから、ぽつりと声が落ちた。「今日、部活休みなん?」「うん」「そっか」 それだけ。 会話は短くて、意味もない。 でも、無言ではなくなった。 それからは、帰り道で、当たり前みたいにそんなやり取りが増えた。「小テスト、だるかったな」「ほんま」「英語、意味わからん」「わかる」 特別な話はしない。 でも、話す。 並ぶことも、話すことも、どちらも説明されないまま、日常になっていった。 その日、帰り道の途中で、急に雨が降った。 ぽつり、と大粒の雨が肩に落ちる。「……あ」 足を止めた瞬間、隣で布の擦れる音がした。 黒い傘が、静かに開く。「……入る?」 それだけ言って、晴紀は前を向いたまま、傘をほんの少しだけ傾けた。 ほんの数センチ。 でも、それで肩が濡れなくなる。「……ありがと」「ん」 それだけで終わった。 肩と肩が、ときどき触れる。 歩くたびに、布越しに体温が伝わってくる。 息を吸うと、ちゃんと、胸に空気が入った。(……ああ) そのとき、はっきり思った。 私は、この人の隣

  • 憎しみと愛~共犯者と綺麗になった私の七年越しの復讐計画~   第50話 ゴミ箱の中の巾着

    「それ、うちでは普通やけど」 いずみは、ほんの首を傾けてそう言っただけだった。 通っていたのは、京都でも名の通った私立中学だった。 親の顔で入る子もいれば、 奨学金で必死に席を守っている子もいる。 同じ制服。 でも、世界は同じじゃない。 いずみは、それを知らなかった。 知らないまま、口にしてしまう側だった。「毎朝、迎え来はるし。 制服も、汚れたらすぐ替えが出てくるし」 教室の空気が、一瞬止まる。 言った本人は気づいていない。 自慢している意識がないからだ。「……へえ」 クラスの中心にいた女子が、笑った。 彼女は、特待に近い形で入ってきた子だった。 でも、その笑みは目まで届いていなかった。「神園さんってさ、 やっぱ世界ちゃうよね」 笑い声が起きる。 軽い。冗談みたいに。 いずみは、少しだけ困った顔をした。「え……? そんな大したことやないけど」 それが、決定打だった。(否定しながら、上にいる顔) そう受け取られたことに、いずみは気づかない。*** 変わったのは、その日からだ。 声をかけられることが減り、 輪の中から、自然と外される。 体育のあと、ロッカーを開けると、 体操服が床に落ちていて、少し濡れていた。「……あ、ごめん。踏んだかも」 謝りながら、誰も拾わない。「でも神園さんやし、 また新しいのあるんやろ?」 悪意は、笑顔に包まれていた。(……なんで?) 思い当たるのは、昨日の一言だけ。 でも―― 正論と金持ちは、いじめの最短ルートだった。*** 家に帰って、そのまま話した。 父は新聞から目を上げず、 兄は、紅茶を飲みながら言った。「どうしてほしい」 事務的な声だった。 心配でも、怒りでもない。「相手を潰してほしいのか」 いずみは、言葉に詰まる。「……そんなこと、思ってへん」 父が、静かに紙面をめくる音がした。「なら、いちいち言ってくるな」 兄は視線も向けずに続ける。「お前が浮いているだけや。 神園家の人間なら、それくらい分かるやろ」 正論だった。 どこにも、間違いはない。(……何かしてほしいわけじゃない) 胸の奥で、声にならない言葉が揺れた。(ただ、聞いてほしかった) それだけだった。 でも、そのそれだけが、 この家では一番、不要なも

  • 憎しみと愛~共犯者と綺麗になった私の七年越しの復讐計画~   第49話 揺れる心は、パリへ向かう

    「清晴堂の《希望の赤》、拝見しました。美しい……だけでは説明が足りませんね。 感情がある菓子と言うべきかしら」 モニターに映るのは、パリの朝の光を背にした三人の役員。 中央の女性──《メゾン・ド・ヴァロワ》投資部門の新規事業部長ミレイユ=ルノワールは、冷静そのものの眼差しだった。 フランス訛りの英語が静かに落ちる。 晴紀の肩が、わずかに強張った。「……ありがとうございます。まだ改良の余地はありますが、 必ず世界で売れる形に仕上げます」 言った瞬間、ミレイユの視線が動いた。 鋭い。だが、興味を隠しきれていない。「清水社長。あなたの会社の財務状態は厳しい。 一ヶ月後にはキャッシュが枯れると聞いています」 沈黙。 喉を鳴らしたのは晴紀ではなく、悠斗だった。「――事実です。 ですが、我々は撤退ではなく前進を選びます。 ヴァロワさんと共同ブランドをつくれるなら、再建計画は一気に軌道に乗る」 ミレイユは指先でレンズを押し上げ、軽く頷くと、ゆっくり私に視線を移す。「朝倉さん。 あなたの物語設計が、今回のバズを生んだと聞きました。 あなたの視点は、我々の市場で通用しますか?」 息が止まった。 だが、逃げるわけにはいかない。「……通用させます。 日本の職人技と、そこにある再起の物語は、世界共通の価値だと思っています。 その橋を渡すのが、私の仕事です」 数秒の静寂。 ミレイユの唇が、わずかに上がった。「いいでしょう。 ただし、ひとつ条件があります。 来週、パリで開催される《Salon de la Lumière》── 菓子の国際展示会で、あなたたちの《希望の赤》を生で見せてください」「……生で?」「ええ。 私たちは、数字より手を見る。 清晴堂の魂を、この目で確かめたい」 接続が切れた後もしばらく、空気は張りつめたままだった。 晴紀は深く息を吐き、震える拳をそっと机の上に置いた。「……行くしかない。 朱音、悠斗──パリで勝負だ」*** 部屋の照明は落とされ、間接灯だけが柔らかく滲んでいた。 扉を閉めると同時に、Dがこちらを向いた。「……決まったのね。パリ」 短いその一言で、すべてを把握しているのがわかった。 テーブルの上には、紙袋と資料がきちんと並べられていた。 帰る前に準備していたのだろう。几

  • 憎しみと愛~共犯者と綺麗になった私の七年越しの復讐計画~   第48話 積み上げた火薬に、火がついた日

     若手職人が、失敗した夜も、沈んだ赤の断面も、再挑戦も、  成功の瞬間まで——時系列で淡々と投稿していた。  ただの記録のはずだった。  だけどそれは、様子の違う広がり方をしていた。 「……え、何これ、再生回数、昨日の十倍……?」  若手のスマホ画面に、数字がみるみる跳ね上がる。  手元しか映っていない。  顔も、設備も、レシピも写していない。  それなのに──。 「戦ってる手だ、これ」 「こんな和菓子見たことない」 「紅葉が揺れるってどういう制作工程?」 「清晴堂って倒産危機のとこだよね?応援したい」 「お茶のお菓子は清晴堂でした。こんな挑戦してるなんて、もう一度食べたい」 (火が付いた。……仕掛けてもいないたった一枚で)  いや、違う。  火薬は、ずっと積み上げていた。  春・夏の導線、職人の挑戦のストーリー、複数媒体での発信。  でも、それだけで炎にはならなかった。  作っていない共感──あの、生の一枚が、火をつけた。 (……これは、来る)  背骨の奥がぞくりと震えた。  数字の動き方だけでわかる。これは、大きく跳ねる波だ。 (やっと……積み上げてきたものが、形になって返ってきた)  息を吸う。ゆっくりと。 (来るなら、掴む) (清晴堂ごと、次の場所まで——行く) ***  数時間後──予想は現実に変わった。  私は京都から東京へ戻る新幹線の中で、  止まらない通知をぼんやりと眺めていた。  そのとき、スマホが震えた。  画面に《鬼塚》の文字。 「……面白くなってきたな」  電話越しの声が、わずかに弾んでいた。 (さすが……こういう芽を一番早く嗅ぎ分ける人だ) 「朝倉さん、君、このバズ……  日本より海外の反応が強いぞ」 「海外……?」 「英語圏とフランス圏の立ち上がりが妙に早い。  手元で見てみろ。たぶん、コメント欄が変わってる」  言われて、私はスマホを開いた。  数秒遅れて、英語とフランス語のコメントが一気に流れ込んでくる。 “Where can I buy this? This is insane craftsmanship.” (どこで買えるの? この技術、やばい) “Où puis-je acheter ça ? La lumière dans ce suc

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status